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SBSラジオ「ユズリンの音楽日記」
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たかが歌、されど歌

2003年5月27日

 みなさん、聞いていただけましたか?静岡放送のラジオ番組『子どもたちから そして子どもたちへ〜ユズリンからの音楽のメッセージ〜』を。聞きましたかって、聞けませんよね。静岡県内だけですからね。失礼しました。
 僕はですね、ちょうど静岡県三島市で「そよ風カレッジ」という講習会をしていたんです。本当は復習の時間だったのですが、参加してくださった方の賛同を得て、15時から生放送をみんなで聞きました。それも音響さんが用意してくれてあった大きな立派なスピーカーでね。
 ある小学校の子どもたちが歌う「笑顔がかさなれば」に乗せて、アナウンサーの今村さん(ほら、金井さんとのコンサートで「Invitation to Yuzz」の司会をしてくださった方ですよ)のしびれるような素敵な声が流れてきました。その瞬間から、すぐにのめり込んでしまうほどの響きでした。そして、いろいろな方のメッセージが織り込まれながら、番組は進行していくのでした。
 メッセージと言っても僕に対する言葉ではなく、僕が創った歌への思いですね。例えば、子どもたちはこんなふうに話してくれていました。

「僕が好きな歌はドンマイです。失敗しても、次はがんばるぞっていう気持ちになるからです。」「わたしが好きなのは、笑顔がかさなればです。歌っていると友達がいっぱいできそうで、うれしくなります。」「ぼくは、少年少女冒険隊が好きです。元気が出るからです。」

 もちろん、先生方も話してくれていました。「もっと、全国に発信してほしい・・・。」うれしくもあり、責任を感じる言葉でした。教員時代の友達の声もあったし、音楽センターの中根さんの声もあったし。誕生日のプレゼントをもらった時のような、そんな喜びでした。

 この放送での聞きどころのひとつに、「DO MY BEST!」のエピソードがありました。
 広島のある男の子の話です。その子は小学生の時に亡くなってしまったのですが、彼は病床でずっとこの歌を歌っていたんです。自分の生命が消え行くのに立ち向かうかのような彼の声。その声と僕の歌う「DO MY BEST!」がみごとにつながっていきます。彼の両親も、最愛の子の寂しい話をきっとしたくはないでしょうに、涙をこらえながら、あるいは泣きながらも一所懸命、語ってくれました。我が子の生命のこと、病気のこと、ぼくとの出会いのこと・・・。さらに、こんな話もしてくださいました。
 「自分の生命を自分で止めようとしている人に、この曲を知ってもらいたい。」

 実は、僕も彼とはビデオでの出会いでした。ご両親がくださったビデオに映る、病床で歌う彼の姿に、涙がぼろぼろ流れたのを今でも覚えています。そして、この時に感じたことがありました。
 「もっと言葉が届くような歌い方をしたい。」
 リズム先行になってしまうと、どうしても手拍子が湧き上がり、聞いてほしい歌詞、伝えたい言葉が届けられないジレンマが前々からあったんです。子ども達にわかってほしい事が素通りしていくのが、見えるんです。どうしていいのかわからずにいた僕に、彼の歌声が教えてくれたんです、どう歌ったらいいのかを。
 もちろん、リズミカルな曲を否定しているんじゃないし、そういう曲が嫌いだとか言っているんじゃないですよ。そうではなくて、曲によっては言葉を生かしたいものもあるんですね。小さな声でもいいから、ささやくようにでもいいから・・・。たとえ下手でも、自分のピアノだけで静かに語るような演奏がしたい、いえ、しなきゃ。

 そんな僕のわがままを聞いてくれたのが、音楽センターの方々でした。『DREAM,TOGETHER』というタイトルのCDを制作してくれたんです。言葉をさらに大事にしたアルバムにしたくて、すべて新しいアレンジにしてもらいました。もちろん、歌もハーモニーも全部歌い直しです。
 「DO MY BEST!」「とっておきの一人」は、特に以前のものを知っていらっしゃる方は、ある意味ショックを受けるようです。こんなふうに変わるのかと。「レールの果ては見えないけど」「この青い地球で」「夕焼けが始まれば」「空を飛べるよ」「明日を夢見て」等、みんなみんな僕のイメージを最大限にふくらめてくれる、素晴らしいアレンジになって理想どおりに蘇りました。

 テンポが揺れるような歌い方ができなかった僕が、彼との出会いによって挑戦できました。本当にありがたいことです。彼の生命は残念ながら消えてしまったのですが、こういう形で僕の中に新しい小さな火を灯してくれました。つまり、彼は僕の中で生きているんです。

 彼の歌う声に、僕の歌声がつながっていく、自然につながっていく。そんな構成にしてくださった今村さんにも感謝です。

 最後に教え子の言葉もお伝えしましょうね。「10年たつのに、先生は何も変わっていませんでした。」「なんだか、先生は小さくなったかなと思いました。というか、私たちが大きくなったんですよね。」「先生の教え子で、本当に良かったです。」

 涙がこぼれて困ってしまったユズリンでした。